2019年入試解答・第1弾「東大理系・第1問」(補足・感想編)


東大理系(前期)・第1問

 次の定積分を求めよ。
\[ \int_{0}^{1} \left( x^2 + \dfrac{x}{ \sqrt{1 + x^2} } \right) \left( 1 + \dfrac{x}{ (1 + x^2) \sqrt{1 + x^2} } \right) ~dx \]

参考資料

永島先生ポイント集

高校数学の美しい物語「高校数学における8つの線形性の例


感想(補足・19/03/14更新)

「なんだ,ただの定積分じゃないか」とか「超簡単じゃないか」,「東大もここまで落ちたか」とか言われていますが…
まぁ,「東大理系数学」と考えると,確かに面白みが少ないかもしれないですね。
ただ,定積分の計算方法が定着できているか確認するのに持ってこいだとは思います。
高校の数IIIの定期テストに出てきそうですね。
いろんな予備校の解答速報や受験情報サイトで解答が出ていますが,とりあえず私なりの解答例を載っけてみます。

(以下,19/03/13更新)
さて,以下は数学IIIの問題が「解説を見ると解けるが,自力では解けない」という人に向けたアドバイスです。

本問の解答の方針としては,まず被積分関数
\[ \left( x^2 + \dfrac{x}{ \sqrt{1 + x^2} } \right) \left( 1 + \dfrac{x}{ (1 + x^2) \sqrt{1 + x^2} } \right) \]
を展開するところから着手すると思うのですが,「なぜ展開するのか」ということを考えた人はいるでしょうか?

これは積分の性質が大きく関わっています。
$\alpha,~\beta$ を定数として,
\[ \int_a^b \{ \alpha f(x) + \beta g(x) \}~dx = \alpha \int_a^b f(x)~dx + \beta \int_a^b g(x)~dx  \]
が成り立ちます(永島先生ポイント集のNo.3401も参照)。
この性質は積分だけでなく,ベクトルや $\Sigma$ 計算などでも学んだことがあると思います(高校数学の美しい物語のリンクも参照)。

この線形性から,積分計算をするためには積や商のカタチより「和や差のカタチ」の方が計算しやすいため,今回は式を展開するという方法をとります。
ただし,

  • 部分積分 $\displaystyle \int_a^b f'(x) g(x)~dx = \left[ f(x)g(x) \right]_a^b - \int_a^b f(x)g'(x)~dx $
  • 三角関数の積→和の公式

などもあるので,何でもかんでも展開すればよいというわけではない点に注意してください。

ところで,本問がいろいろ議論(?)を呼んでいますが,その理由の1つに現代の技術では定積分くらいはコンピュータで簡単に計算できてしまうという点です。
Wolfram|Alphaというサイトを使うと,このように一瞬で答えが出てきます。
ただ,東大の入試製作側もこのような技術があるのは知らないわけがないので,どういう意図でこの問題を出題したのかは気になります。
今後公表予定の出題意図が楽しみです。





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