(数学基礎1-2)・数の種類


数学の基礎のお勉強
第1章「命題と論証,数の世界」
第3講「数の種類」

数学の基礎のお勉強」のシリーズの記事です。
更新をサボってました…
記事の意図は上のリンク先を参照してください。

中学校の数学までは,実数までしか扱っていません。
高校に入り,数学IIの最初まで学ぶと新たな数である「複素数」を学びます。

さて,複素数まで含めて,今まで学んできた数に関して正しく理解できているでしょうか?
次の問題を見てみましょう。

問題

$\mathbb{N,~Z,~Q,~R,~C}$ はそれぞれ自然数,整数,有理数,実数,複素数全体の集合を表すものとする。(1) 〜 (5) に関しては,空欄にあてはまるものとして最も適切なものを(選択肢1)の中から 1 つ選べ。ただし,同じ選択肢を何度用いてもよいものとする.(6) に関しては①,②の問いに答えよ。

(1) $\sqrt{3}~[\hspace{10mm}]~\mathbb{Q}$ である。
(2) $\mathbb{N} ~[\hspace{10mm}]~ \mathbb{Z}$ である。
(3) $\displaystyle \frac{\sqrt{4}}{2} ~[\hspace{10mm}]~ \mathbb{Q}$ である。
(4) $\mathbb{Z} ~[\hspace{10mm}]~ \mathbb{Q}$ である。
(5) $\mathbb{C} ~[\hspace{10mm}]~ \mathbb{R}$ である。

(6)
① 無理数の定義を答えよ。
② $A$ を無理数全体の集合とする.また,集合 $X,~ Y$ について,$X$ が $Y$ の部分集合であるとき,集合 $Y \cap \overline{X}$ を $Y-X$ で表すとする。ただし,$\overline{X}$ は集合 $X$ の補集合を表す。①で述べた定義にもとづくと,\[ A = [\hspace{5mm} \mbox{ア} \hspace{5mm}] -  [\hspace{5mm}\mbox{イ}\hspace{5mm}] \]である。空欄ア,イに当てはまる最も適切なものを(選択肢2)の中から 1 つ選べ。1つずつ選べ。

(選択肢1)
$({\rm a})\in \hspace{4mm} ({\rm b})\notin \hspace{4mm} ({\rm c}) \ni \hspace{4mm} ({\rm d})\ni \hspace{-9pt}/ \hspace{4mm} ({\rm e})= \hspace{4mm} ({\rm f}) \subset \hspace{4mm} ({\rm g}) \supset$

(選択肢2)
$({\rm n})~ \mathbb{N} \hspace{4mm} ({\rm z})~ \mathbb{Z} \hspace{4mm} ({\rm q})~  \mathbb{Q} \hspace{4mm} ({\rm r})~ \mathbb{R} \hspace{4mm} ({\rm c})~\mathbb{C}$


    知識事項整理

    さて,本問では「自然数」「整数」「有理数」「無理数」「実数」「複素数」という6種類の数が出てきます。それぞれの定義と関係は分かるでしょうか?
    それぞれ,ベン図で表すと以下の図のようになります。

    このようにして見ると,小学校の算数で習った「自然数」から徐々に概念を広げているのが分かると思います(小学校だと負の数を習わないので,厳密には違いますが…)。
    有理数の定義については,次回の記事で扱います。

    (6)では無理数はどの部分にあたるのかが問われていますね。
    上の図には登場していませんが,どこなのでしょうか…

    永島先生のポイント集(No. 1001)でも,非常に丁寧に説明がされているので,確認してみてください。

    というわけで,この問題の解答です。

    解答

    (1) $\sqrt{3}$ は無理数であるから $\sqrt{3} \notin \mathbb{Q}$ である.よって,答えは (b) .

    (2) すべての自然数 $n$ について,$n \in \mathbb{Z}$ が成り立つから,$\mathbb{N}$ は $\mathbb{Z}$ の部分集合,すなわち $\mathbb{N} \subset \mathbb{Z}$ である.よって,答えは (f) .

    (3) $\displaystyle \frac{\sqrt{4}}{2} = 2 \left( = \frac{2}{1} \right)$ より,$ \displaystyle \frac{\sqrt{4}}{2} \in \mathbb{Q}$ である.よって,答えは (a) .

    (4) すべての整数 $n$ について,$n \in \mathbb{Q}$ が成り立つから,$\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Q}$ の部分集合,すなわち $\mathbb{Z} \subset \mathbb{Q}$ である.よって,答えは (f) .
    (5) すべての実数 $x$ について,$x \in \mathbb{C}$ が成り立つから,$\mathbb{R}$ は $\mathbb{C}$ の部分集合,すなわち $\mathbb{C} \supset \mathbb{R}$ である.よって,答えは (g) .

    (6)
    ① 無理数は実数のうち,有理数でない数である.
    ② ①の定義より,集合 $A$ は集合 $\mathbb{R}$ から  $\mathbb{Q}$ を除いたものであるから,
    \[ A =  \mathbb{R} -  \mathbb{Q} \]

    よって,答えは ア:(r),イ:(q)  .

    補足①

    (6)は上の数の集合のベン図で表すと,次の図の塗りつぶされた範囲になります。

    補足②(記号について)

    集合の要素を表す $\in,~\ni$ や 集合どうしの包含関係を表す $\subset,~ \supset$ について補足します。
    まず,$\in,~\ni$ については「$a$ が集合 $S$ の要素である(集合 $S$ に属する)」 とき,
    \[ a \in S ~\mbox{あるいは}~ S \ni a \]
    と表します。

    次に部分集合についてですが,多くの人はベン図での包含関係で理解していると思いますし,それで問題はないと思いますが,数学的な定義について触れたいと思います。大学の数学(特に位相空間論)を学ぶと必ずでてくるので,理系の方は覚えてもいいと思います。
    集合 $R$ の任意の(すべての)要素 $x$ について,
    \[ x \in R  \Longrightarrow x \in S \]
    が成り立つとき,$R$ が集合 $S$ の部分集合であるといい,$R \subset S $ あるいは $S \supset R$ と表します。



      次回について

      第3講は「有理数と無理数①」を,順天堂大学・医学部の入試問題を用いて扱います。

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